はじめに
去年の冬、冷蔵庫の奥から古い妊娠検査薬を見つけたとき、胸がぎゅっと締め付けられた。あの頃、わたしも夫と「もう一回、子どもを」と願って、毎月のタイミングを計り、夜の時間を重ねていた。でも、そのときの「義務感」が、セックスをどんどん重くしていた。この作品を見たのは、その記憶がふと蘇った夜だった。
あなたが、セックスを「目的」に変えてしまった経験があるなら、この作品はきっと、あなたの心の奥に触れる。
・妊活という名の性交の重さが、日常の歪みとして描かれている
・妻の妹という「第三者」が、夫婦の性の在り方を鏡のように映す
・禁欲と搾取の繰り返しで、性欲が「感情」から「行為」へと変質していく過程がリアル
あらすじ
妻は妊活以外ではセックスを拒否する。一方で、夫は毎日射精しないと落ち着かないほど性欲が強く、産婦人科の医師からも精子の質の低下を指摘される。禁欲を試みるが、週末になると妻の妹が自宅に訪れて、夫が溜めた精子を搾り取っていく。その行為は、妻の許可のもとで行われ、夫は「妊活のため」と自分に言い聞かせながら、妹との性交を繰り返す。妻は一切関与せず、ただ結果を待つ。この作品の構成は、性行為が「生殖の手段」として機能するとき、人間関係がどう崩れていくかを、静かに、しかし鋭く描いている性の目的化が、愛の形を徐々に消していく。
出演者は五芭です。
h3 妊活という名の「義務」が、セックスを冷たくする
この作品では、セックスが「妊娠のための行為」に限定され、それ以外の目的や快楽が排除されている。夫は妻との性交を避け、妹との行為を「妊活の一部」として正当化する。この構造は、現実の妊活カップルにもよく見られる。わたしもかつて、排卵日をカレンダーに印して、夜に「タイミングを取る」ことを義務のように感じていた。そのとき、夫の手が触れた瞬間、心のどこかで「またか」と思っていた。
この作品の夫は、その感情を言葉にできないまま、妹の身体に逃げている。妻は無言で、ただ結果を待つ。その無言の重さが、セックスの本質を奪っている。
性が目的化すると、触れ合うこと自体が、ただの作業になる
妻は「妊娠したい」という願いを優先し、夫の性欲を「管理」することで、自分自身の感情から目を背けている。彼女は、夫の行為を「仕方ない」として受け入れているが、その選択が、夫婦の信頼をどう壊すかを、深く考えていなかった。
h3 妹の「甘い誘い」が、夫の心をどう変えるか あのとき、わたしもそうだった。自分を必要としてくれる人がいれば、どんな形でもいいと思った
妹は妻の妹という立場でありながら、夫に対して積極的で、笑顔で「今日も溜めてた?」と声をかける。その態度は、妻の冷たさと対照的で、夫は「自分を必要としてくれる」感覚を妹から得ている。しかし、その甘さは、決して愛情ではなく、妊娠という目的のための「道具」である。
わたしは、かつて離婚した夫の元カノと偶然会ったとき、彼女が「あの頃、あなたは私にだけ優しかった」と言ったのを思い出す。でも、それは「私が彼の感情を必要としていた」からだった。妹も同じ。彼女は夫の性欲を「利用」しているのではなく、夫が「自分を必要としている」と信じている。
誰かに必要とされる感覚は、性の空虚さを埋める最も危険な薬
妹は妊娠を望んでいるというより、夫の性欲を「管理」することで、自分の存在価値を確認している。彼女は妻の代わりに「性の役割」を引き受けており、その行為が、彼女の自己肯定感の源になっている。
h3 禁欲と搾取のループが、夫の心をどう蝕むか わたしも、あの頃、自分の身体が「妊娠機械」のように感じた。それから、セックスが怖くなった
夫は「禁欲」を試みるが、すぐに妹に搾取され、また禁欲を繰り返す。このループは、性欲を「コントロール」しようとするがゆえに、逆に性を「依存」の対象にしている。彼は、自分の身体が「精子の容器」であると感じ始め、自分自身の欲望がどこから来ているのか、わからなくなっている。
わたしの友人が、不妊治療中に「毎日、排卵日を待つのが怖くなった」と言っていた。そのとき、彼女は「自分の身体が、もう自分のものじゃない」と感じていた。この作品の夫も、同じ状態だ。彼の身体は、妻の願いと妹の要求の間で、ただ「出力」される対象になっている。
性欲をコントロールしようとするほど、人は自分の欲望から遠ざかる
現実の妊活では、セックスを「計画的」にするのは普通だが、この作品はその「計画」が、感情を殺してしまう極端な例を描いている。現実の夫婦は、もっと複雑な感情を抱えながら、それでもつながろうとしている。この作品は、そのバランスを失ったときの姿を映している。
・妊活や不妊治療の経験がある人 ・セックスを単なる快楽としてだけ見たい人
・セックスが「義務」や「目的」に変わった経験がある人
・夫婦の性の在り方に、違和感や孤独を感じたことがある人
・性と感情のズレを、冷静に見つめたい人
・夫婦関係の複雑さに耐えられない人
・「痴女」「寝取り」などの刺激を求めて見る人
あい香の総評
この作品を一言で表すとしたら、「性の空洞化」です。
夫が妹と終わったあと、冷蔵庫から水を飲んで、鏡を見つめるシーン。彼の目には、何も映っていない。その無表情が、どれだけの喪失を意味しているか、胸に突き刺さった。
| リアリティ | ★★★★★ |
|---|---|
| 感情の深さ | ★★★★☆ |
| 演出の静かさ | ★★★★★ |
| 人間関係の描写 | ★★★★★ |
| 見終わった後の余韻 | ★★★★☆ |
あい香として、正直に言える評価は──
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