はじめに
以前、職場で同僚のミスを知ってしまったことがありました。口外するつもりはなかったけれど、その事実を握っていることで、自然と距離感がずれていくのを感じたんです。
そのときの「知ってしまったからには、もう戻れない」という違和感が、この作品の主人公と重なったんです。
この作品を読むなら、「人間関係の権力構造が、いかに微妙に、しかし確実に変化するのか」に興味のある方におすすめです。
紹介するからには、わたし自身が一画面ずつ観て、場面ごとに「なるほど」と思う点を拾って紹介するスタンスです。
・「嫌な顔されながら」の繰り返しが、権力関係の逆転を静かに描く演出
・経理という職種ならではの「数字のミス=弱み」という現実的な設定
・主人公の「中年サラリーマン」という立場が、社会的無力感を象徴する象徴性
あらすじ
経理課で働く中年男性は、仕事でも人間関係でも見下されがちな日々を送っていた。一方、同課の彩月さんは若く、仕事もできる社内の高根の花。ある日、彼女が会社の金を横領している事実を偶然発見し、その弱みにつけ込むことで、これまで溜まっていた性欲をぶつける決意をする。嫌な顔をされながらも、彼女を寝取っていく展開が進む。この作品は、単なる性的な快楽ではなく、権力の転換と人間関係の歪みを、現実的な職場設定で描いている。
「嫌な顔されながら」の繰り返しが、権力の転換を静かに描く演出
この作品では、「嫌な顔されながら」というフレーズが、ただのセリフではなく、権力関係の変化を示す「合図」として機能している。
最初は彩月さんが「嫌な顔」を浮かべて拒否するが、徐々にその表情が「嫌悪」から「諦め」、さらには「無力感」へと変化していく。この表情の変化が、権力の転換を視覚的に伝える仕組みになっている。
わたしは、かつて同僚がミスをしたとき、「助けてあげよう」と思って声をかけたことがありました。でも、その「優しさ」が実は「見下し」だったことに、後から気づいたんです。そのときの違和感が、この作品の描写と重なった。
「嫌な顔」は、単なる拒否ではなく、相手の「弱みを握られている」ことへの無力感の表れです。拒否しながらも、その行動をやめられない状況に置かれていること自体が、権力の転換を示しています。 「嫌な顔」の変化に気づいたとき、胸が締め付けられるような感覚がありました。
経理という職種ならではの「数字のミス=弱み」という現実的な設定
経理という職業柄、ミスは「個人の責任」ではなく「組織のリスク」と直結する。
この作品では、単に「ミス」ではなく、「修正が必要な程度のもの」ではなく、「隠蔽が可能なレベルのもの」を弱みとしている点が、現実的な危うさを感じさせる。現実の職場でも、小さなミスが大きな問題に発展しかねないという感覚に、共感せざるを得なかった。
わたしは以前、同僚が誤って提出した資料に数字の誤りがあり、それを指摘するか迷ったことがあります。指摘すれば「細かい」と思われるし、黙っていれば「見逃した」と思われる。そのときの葛藤が、この作品の主人公の心理と重なった。
現実の職場では、小さなミスが「握られる材料」になることは珍しくありません。この作品は、その「日常的な危うさ」を極限まで引き出した構成になっています。
中年サラリーマンという立場が、社会的無力感を象徴する象徴性
主人公は「若く、できる彩月さん」と対比される形で描かれるが、その差は「能力」だけでなく、「社会的な立場」にも表れている。
彼が「中年サラリーマン」として抱える無力感は、単なる自己卑下ではなく、組織の中で「使われなくなった存在」としての自覚から来ている。その自覚が、性的な欲求と結びつくことで、人間の弱さを露呈させている。
わたしは離婚後、一時期「自分はもう価値がない」と感じていた時期がありました。そのときの虚しさが、主人公の「溜まっていた性欲」の描写と重なった。
その表層はそう見えますが、本質的には「自分を認めてほしい」という欲求の裏返しです。弱みを握る行為は、実は「注目してほしい」ことの代替行動でもあります。
こんな人におすすめ・おすすめしない人
・人間関係の権力構造に興味がある方 ・「嫌な顔」の描写に強い違和感を感じやすい方
・現実的な職場設定で描かれる心理描写を好む方
・「弱みを握る」という行為が、人間関係にどのような影響を与えるか知りたい方
・「嫌な顔されながら」シリーズの世界観に興味がある方
・権力関係の転換を描く作品に抵抗感を持つ方
・心理描写よりも、性的な描写を重視する方
あい香の総評
この作品を一言で表すとしたら、「権力の転換が、いかに静かに、しかし確実に人間関係を変えていくか」です。
彩月さんが「嫌な顔」を浮かべながらも、主人公の要求に応じざるを得ない場面。その表情の変化が、単なる抵抗から「諦め」へと移行していく様子が、非常にリアルで胸が痛くなりました。
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 心理描写の深さ | ★★★★★ |
| 現実性・共感性 | ★★★★☆ |
| 演出の工夫 | ★★★★☆ |
| 物語の完成度 | ★★★★☆ |
| 繰り返し観る価値 | ★★★☆☆ |
あい香として、ブロガーとして、正直に言える評価は──
この作品は、単なる性的な快楽ではなく、「人間関係の権力構造」を静かに、しかし鋭く描いた作品です。観終わったあとの違和感が、長く残ります。
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